コラム

2014/01/521 「鉄鋼王」カーネギーを育てた母の教え

アンドリュー・カーネギーを知っていますか?
彼はスコットランド生まれのアメリカの実業家です。
カーネギー鉄鋼会社を創業し、成功を収め「鋼鉄王」と称されました。
事業で成功を収めた後、教育や文化の分野へ多くの寄付を行ったことから、今日でも慈善家としてよく知られています。

アメリカの新興成金や大富豪のなかで、アンドリュー・カーネギーだけは特別な存在として子どもたちにも語り継がれているのです。
今日は彼の思想が作られた背景を学んでみましょう。

1835年、アンドリュー・カーネギーはスコットランドの田舎町であるダンファームリンに生まれました。
カーネギーは、自分の家庭環境と故郷について次のように語っています。

「よい先祖をもって私は非常に運がよかったが、私はまた故郷についても同様に運がよかった。」

アンドリュー・カーネギーの父ウィルソン・カーネギーは、大規模な製造業者から糸をもらって仕事をする手織工でした。
カーネギーの生まれた家は決して裕福ではありませんでしたが、楽しく暖かな家庭でした。
かいがいしく働いて家計を助けた母マーガレットは、家庭を楽しい場所にすることを家庭学の第一歩として考えていたそうです。

アンドリュー・カーネギーは、母であるマーガレットについて「どんな事態に陥っても決してくじけることのない人物だ」と語っています。
昼には店で野菜やお菓子を売り、夜には内職に励んだマーガレット。
マーガレットとアンドリューは力を合わせて、父であるウィルソンの手助けをしようとしました。

しかし、産業革命の進展によりウィリアムがせっせと作る手織物は時代に取り残されてしまいます。
3人の努力にもかかわらず、一家は一文無しも同然の状況に追い込まれ、明日の食事も準備できないようになってしまうのでした。

カーネギー一家は非常に貧しい状況を打開しようとして、アメリカに移住しました。
アンドリューもマーガレットも必死で働いて父ウィルソンを助けようとしました。
そんなある日、一家を訪ねてきた叔父がこんなことを言いました。
「アンドリューはとても利発で勤勉だ。何をやってもそつなくこなす。
 そこで相談だが、港で小間物の行商でもやらせたらどうかね。
 糸巻き工なんかよりはるかに稼げると思うが……」

この言葉を聞いて、マーガレットは非常に怒ったそうです。
自分のかわいい息子が場末の波止場で物売りをするなんて、母マーガレットには考えられなかったのです。
叔父を帰った後で、マーガレットは涙を流しながらアンドリューにこう語りました。
「私が取り乱したのを気にかけてはいけないよ。
 世の中には私たちにできることがたくさんある。
 私たちは有用な、また他人から尊敬される人にならなければいけない。
 そのためには、常に正しいことをすることが大切なの」

マーガレットの怒りの理由は、このように尊い思想を持った一家の誇りを踏みにじられたと感じたからだったのです。
アンドリューはこの時を振り返って、このように語っています。

「世の中には金銭よりもはるかに価値の高いものがあり、そのためなら命までかける人間がいるのだと学んだ」

このような母の教えが、アンドリューの人格を育てていくのです。

「裕福な人はその富を浪費するよりも、
 社会がより豊かになるために使うべきだ」

「金持ちのままで死ぬことは不名誉なことである」

これがカーネギーの信条です。
このような素晴らしい思想に基づき、彼は引退後の半生を「富の分配」に捧げました。
アメリカやイギリスに2811もの公共図書館を寄贈し、カーネギー財団やカーネギー大学、カーネギーホールなどを設立しました。
寄付金の総額は3億5000万ドルとも言われ、死後にはわずかな遺産しか残さなかったのです。

彼はいつでも、母の教えを胸に刻んで金銭よりももっと大切なことがあると考え正しく生きようとしました。
彼は、
「自分の成功はひとえに母のおかげだ」
と述べています。
初めて出版した本には「私の愛するヒロイン、母に捧げる」と献辞を入れたほど、彼の中で母の存在はとても大きなものでした。

彼がしばしば口にした「富の哲学」もまた、母の言葉に導かれたものだと言われています。

「富める者は、母なる大地の中に眠る前に、自分の持っているものをすべて売り、その富を、貧しい人々のために役立つ最も有益な事業に使用すべきである。
 そうすれば、無用の富の蓄積者として一生を終えることはない。
 このようにして最期を迎えた人の死は、金銭的には貧しい人と変わりがなくても、社会から受ける尊敬、愛情、感謝、称賛は限りないだろう。
 その人は、富を抱いたまま死んだ人に比べて、何十倍もの心の富者となることができるのである」

コペル 代表 大坪信之

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