コラム 大坪信之のワンポイント徳育アドバイス

2020/07/2083 幼児期の脳の状態が能力の資質を決める?

アメリカのラトガーズ大学 乳幼児研究所は、過去15年間、1,000人あまりの子どもを対象に、乳幼児が将来、読み・書きが得意になるかを早い段階で予測できるか?という追跡調査研究をしています。

この能力に問題があれば、小学校に上がったときに大きなハンディキャップとなることが予想されていましたが、研究の結果によると、やはり相関関係が認められています。

そして、その能力の差は幼児期に決定づけられていることがわかってきました。

保育園や幼稚園で集中できる子どもは、将来勉強ができる生徒になるのか?

子どもの社会的スキル(これも教室では極めて重要です)を伸ばすために、教育者は何ができるのか?

これらの研究は、心理学的・教育学的研究によって、確立された豊富な知識を補完して、脳波の状態を活用した新しい教育法を、生み出していく可能性を拡げています。

これらの脳科学に基づいて、乳幼児を学び上手にし、読み・書き・計算の学習と保育園や幼稚園に始まる複雑な社会ネットワークを生き抜くための備えを身に付けさせる新しい教育が実現できるということになります。

これらの研究の多くは、乳幼児と小学校低学年の生徒を対象としていますが、言うまでもなくその時期の脳が最も柔軟であることが複数の研究から示されているからです。

ベナシッチ博士は、「わかった!」と感じる瞬間に焦点を絞って研究しています。

つまり、何か新しいものが認識されたことを示す脳内の電気的活動の突然の変化の瞬間のことです。

その「わかった!」と感じた瞬間に、脳の構造が形づくられると考えられています。

子どもが瞳を輝かせて「わかった!」という瞬間をたくさん与えてあげましょう!

また、幼児期に「ダ」や「パ」といった、話し言葉の構成要素を素早く聞き取って処理できないと、書かれた文字や音節を頭の中で“声に出して読む”のが遅れる可能性があり、それがもとでスラスラ読めなくなるのかもしれません。

ベナシッチ博士は、音の処理に早くから困難がある幼児は、8~9年後に心理学的言語テストを行うと、成績が芳しくないことを示しています。

言語に問題を生じることを乳幼児の段階で診断できれば、発達中の脳に備わっている可塑性(新しい経験に反応して変化する能力)を利用して、そうした問題を矯正できる可能性があります。

加えて、脳の発達が正常な幼児についても、基本的な脳機能をさらに向上できるかもしれないと指摘しています。

脳を学習に最適な状態に確実にセッティングできるのは幼児期のみである」とベナシッチ博士は言っています。