コラム 大坪信之のワンポイント徳育アドバイス

2020/12/2088 最先端の幸福度研究が示す「自己決定」の重要性

どんな親でも、「子どもに幸せになってほしい」と願う気持ちは同じです。

だからこそ、「将来困らないように」「よい学校に行けるように」「幸せでいられるように」と、いろんなことをしてあげたいと考えます。

しかし、「幸せの条件は何か?」と問われれば、答えに詰まってしまう人も多いのではないでしょうか。

近年、幸福度研究が注目を集めています。

国連の2018年世界幸福度報告書によると、日本の主観的幸福度は世界54位であるという結果が報告されており、この数字は決して高いといえるものではありません。

神戸大学特命教授である西村和夫氏と同志社大学教授である八木匡氏は、「主観的幸福感と所得水準は必ずしも相関しない」という点に着目して、2万人の日本人を対象とする調査を行いました。

その結果、「健康」と「人間関係」に次いで、「自己決定」が幸福を左右する大きな要因となることがわかったのです。

人間には強い生存本能があるため、健康でないと幸福を感じることができないことは頷けます。

また、人とのかかわりの中で愛情を感じることは、幸福の重要な要素であることを疑う人はいないでしょう。

ここまでは、マズローの欲求5段階説を鑑みても納得がいきます。

しかし、「自己決定」が「所得」や「学歴」よりも幸福に関して重要な意味を持つということは、私たちの常識において当たり前のことではありませんでした。

自己決定とは、「人生の選択の自由を持っている」ということです。

自分で進路を決め、自分で将来を作り上げていくことが、お金持ちになったりよい大学に行ったりすることよりも、幸福に関して重要な要素だというのです。

調査の中では、「中学から高校への進学は誰が決めましたか?」「高校から大学への進学は誰が決めましたか?」「初めての就職先は自分で決めましたか?」という3つの質問によって、対象者が人生においてどの程度自己決定をしてきたか分析されています。

そして、上記のような人生の岐路を自分で決定してきた人ほど「前向き志向」であり「不安感が少ない」という結果が示されました。

どこの学校にいくか、どこに就職するか、ということは親からすれば非常に気になるポイントかもしれません。

しかし、そこで子どもの前に立って行き先を決めていくことが、子どもの人生における幸福を奪うことになってしまうのです。

子どもは、自分で学びながら困難を乗り越えることができるすばらしい力を生まれつき持っています。

子どもが本当にやりたいと思えることを自分で選び、自らの道を切り拓くとき、その先にはとてつもない無限の可能性が光り輝いています。

その可能性を後押しすることこそが、子供の能力を高めるだけでなく、幸福感にもつながるということですね!