コラム 大坪信之のワンポイント徳育アドバイス

2021/06/2093 サドベリー・バレー・スクールに学ぶ「内的動機づけ」

サドベリー・バレー・スクールという学校を、聞いたことがあるでしょうか?

この学校は、1968年にアメリカ・マサチューセッツ州のフレイミングハムで設立された私立校です。

この学校には、4歳から19歳までの幅広い年齢層の子どもたちが通っています。

同校をモデルにして、さまざまな国に「サドベリー・スクール」という学校が40校以上も設立されています。

同校のあまりに斬新な、驚くべき教育のあり方をご紹介しましょう。

サドベリー・バレー・スクールでは、子どもたちは勉強を強制されることはありません

生徒たちは、自分の学びたい事柄について、どの教科のどの授業でもリクエストすることができます。

サドベリー・バレー・スクールでは、「人は本当にやりたい、必要だと感じたときに一番よく学ぶ」と考えられており、その瞬間の学びへの信頼が、なによりも大切にされているのです。

同校の教育哲学によれば、人は生まれたときから好奇心を持っているので、子どもに信頼と責任を与えることが大切だといいます。

勉強や義務を強いることなく、徹底して自主性にゆだねていくことで、子どもたちは自分のやりたいことについて、試行錯誤しながら目標を成し遂げていくことができる、というのがこの学校の教育方針です。

卒業生を対象にアンケート調査を行い、まとめた「The Pursuit of Happiness – THE LIVES OF SUDBURY VALLEY ALUMNI(直訳:幸福への追求)」という書籍があります。

これによると、卒業生の85%が人生に対して満足していると回答しているといいます。

この結果は、決して低い数字ではありません。

また、アメリカの一般的な学校に通った生徒の平均と比較して、芸術関連や教育関連、マネージメント(経営職・管理職)といった職業に就く比率がかなり高くなっています

このことは、自分らしさや創造力が引き出されたり、学年もクラスもない生徒間のかかわりの中で、コミュニケーション能力が高まったりした結果だと考えられています。

そして多くの卒業生は、「情熱が持てる」という理由で仕事を選択しています。これは非常に重要なことです。

近年のモチベーション論では「やる気こそがなによりの才能だ」という意見も耳にしますが、人生を捧げる仕事に強い情熱を持つことができるのは、とてもすばらしいことであるといえます。

サドベリー・バレー・スクールの斬新な教育スタイルについて、手放しに全面的な肯定をするわけではありません。

しかし、子どもの好奇心や自主性という非常に重要なファクターに注目したという点においては、日本の教育もこの学校から学べる点が多くあるのではないでしょうか。

現代の教育に本当に求められているのは、子どもたちの好奇心自主性「やりたい」「面白い」というワクワクとした気持ちなのです。

それこそが、創造力と思考力が必要とされるこれからの時代の教育を切り拓く答えとなるかもしれません。