コラム 大坪信之のワンポイント徳育アドバイス

2020/01/2077 二宮尊徳に学ぶ、報徳思想とは?

「二宮金次郎」として有名な二宮尊徳翁は、幼少期の貧しさを糧に、家の再興をし、さらに約600もの藩や郡村を再興し、多くの人々を飢餓・離散から救いました。

尊徳はその人生で学んだ思想の具体的な実践方法を説きました。
それが、「報徳思想」です。

尊徳翁の報徳思想は、「分度」「勤倹」「推譲」「報徳」の四つからなっています

動物はエサを食べたいだけ食べますが、人間は先のことを考えて、収穫の中から、来年のための種を保存します。
「まかぬ種は生えぬ」からです。

そして、一年かけて一家が食べられるように配分し、どれだけ食べ、どれだけ蓄えなければならないかを計画しなければなりません。

このように消費と備蓄の度合いを考えて生活をすることを、「分度」といいます

また、一生懸命働いて収穫を得たら、その利益を倹約するということが大切です。
これを「勤倹」といいます

勤倹によって余りが出れば、これを足りない人に譲る心が大切です。
自分のために残すものを「自譲」、他人のために残すものを「他譲」といいます。
尊徳翁は、この自譲と他譲を合わせて「推譲」と呼びました

推譲に対して、差し出された者は、感謝して、受けた徳に報いるという心、「報徳」が大切です。
つまりお返しをするということです。
この時に、返し手が自分なりのお礼を加えれば、推譲の基金はいよいよ増えていきます。

これら「分度」「勤倹」「推譲」「報徳」は、どれが欠けても完全ではありません。
四つが合わさって人間の生活を全うできるのです。
こういう生き方が、尊徳翁の「報徳思想」です。

尊徳翁は、これをひたすら実践し、人々に広めていきました。
「報徳思想」はただ食べて、生きていく方法ではありません。

わが道はまず心田の荒蕪を開くのを、先務としなければならぬ。
心田の荒地を開いてのち、田畑の荒地に及んで、この数種の荒地を開いて熟田としたならば、国家社会の進展は手のひらをめぐらすように容易であろう

尊徳翁は、田畑のことも、国家社会のことも、まず心を開拓することが第一だと言われています。
心の開発ができれば、国土を豊かにし、国家社会を発展させることができる。

生きるために協働し、支え合いながら、自らを磨き、互いの人格を高め合う「和」の精神、それが人としての道であると尊徳翁は説いています。