コラム 大坪信之のワンポイント徳育アドバイス

2021/11/20新しい教育スタイルを発信するミネルバ大学

いま、まったく新しい教育のかたちとして注目を集めている大学があります。その名も、ミネルバ大学(Minerva School at KGI)です。

同大学はその斬新な校風と最先端の教育スタイルが人気を博し、今やハーバード大学やスタンフォード大学以上の難関とも言われるほどに、全世界から入学希望者が殺到しているのです。

今回は、この大学が発信する最新の教育方法をご紹介しましょう。

2014年に創立されたミネルバ大学には、なんとキャンパスがありません。

生徒たちは在学中の四年間で世界各国の七都市を移動しながら、全寮制の生活を通じて学びを深めていきます。

十八名で一クラスを成す講義はすべてオンラインで行われ、ディスカッションや学生たちの発言を織り交ぜて進んでいきます。

講義時間は、なんと午前中の二時間のみ。その他の時間は現地の行政機関や企業、NPOなどでのプロジェクト学習やインターンに参加するという、斬新なカリキュラムが採用されています。

驚くべきはそのコンセプトや人気だけではありません。一年生修了時のクリティカル思考力を測定する外部テストでは、全米の大学の中で圧倒的一位の成績を収めているというのです。

学生たちは、事前課題を終えたうえでオンライン講義に参加します。従来の講義と異なる点は、教授は学生たちが議論する際のファシリテーションに徹し、十分以上話すことはないという点です。

ミネルバ大学の講義は、学生たちが自ら思考し、積極的に議論に参加し、創造的に答えを導き出していくことに重きを置いています。

特筆すべきは、Active Learning Formと呼ばれる最新のテクノロジーを活用した学習ツールです。これにより、ディスカッションの中で学生がどの主張を選択しているかということが瞬時に可視化されます。

また、教授はどの学生がどれだけ発言しているかということをこのツールによって確認することができ、均等な授業参画を促すことができます。

すべての授業は録画され、学生たちが見直すことができるとともに、教授からは各授業での技能レベルが一人一人にフィードバックされていくのです。

ミネルバ大学の学習スタイルは、まさしく最新のテクノロジーを活用した最先端のオンライン講義であると言うことができます。

ミネルバ大学の創業者のBen Nelson氏は、同大学の学生が優秀たる秘訣について、迷うことなく「カリキュラムだ」と答えています。

ミネルバ大学のカリキュラムは、次の四つのテーマに沿ってすべてが組み立てられているといいます。

1) どうすれば社会の重要な課題を発見できるか
2) 課題に対するクリエイティブな解を見つけられるか
3) 解を実現可能なレベルに落とし込めるか
4) 課題と解についてうまく伝達できるか

つまり、従来型の知識を詰め込むような教育ではなく、自ら思考して課題を発見し、解決していく能力を伸ばす教育であるということです。

これは、AIの台頭により詰込み型教育の必要性が薄れ、「考える力」「創造性」が重視されてきた現代の教育の趨勢に非常に適したあり方だということができるでしょう。

変わりゆく時代の流れの中で、大学教育も大きく変革する必要性に迫られているのです。